米財務省が4月と10月に連邦議会に提出する為替報告書は、自国の輸出競争力を上げる目的で不正に通貨安誘導を行った国・地域を「為替操作国」として制裁を発動する仕組みとなっていますが、オバマ大統領によって、新たに「監視リスト」が設けられ、すぐに制裁するほどではないにしても、貿易相手国の為替政策をけん制できるようになりました。監視リストは、オバマ大統領がTPP(環太平洋経済連携協定)の批准に向け米議会を懐柔す目的で設けられたとされています。当時、オバマ政権(民主党)はTPPの批准にメドが立っておらず、大統領選を前に、国民は貿易相手国が通貨安誘導で自国の製品を有利に売り込んでいると、自由貿易協定に対して批判が高まっていた一方、民主党に対抗する共和党は、伝統的に自由貿易を推進してきましたので、両党の思惑の妥協点として監視リストを設けて為替操作国への強硬姿勢を国民に示してTPPの早期批准のメドを立てたい狙いがあったとされています。
米国は貿易相手国の為替政策が不公平なものではないか(自国の輸出競争力を上げる目的で不正に通貨安誘導を行っていないか等)を以下の3つの基準で審査し、以下3項目全てに該当する貿易相手国に対して是正を促し、1年たっても是正されなければ制裁の対象として、貿易相手国の企業を米政府との取引から締め出したり、通商協定の締結や交渉参加にあたり米通商代表部に考慮を求めるなどの是正措置を発動できるものとなっています。原則、以下の項目の2つに該当すれば監視リストに指定されます。
米国は2016年10月に、日本、中国、韓国、台湾、ドイツ、スイスを監視対象に指定し、2017年4月にトランプ政権下でもオバマ政権における上記の基準を踏襲し、同6カ国を監視対象に指定しました。
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