還流の際の税制には、国外所得免除方式や全世界所得課税方式があります。日本を含む多くの先進国は、国外所得免除方式を採用しており、国外での所得に対して、その国で税を支払えば、自国に配当として持ち帰っても、それは非課税としています。一方、米国は全世界所得課税方式を採用しており、国内外を問わず所得に対して課税し、海外で支払った税は外国税額控除によって排除しています。米国の多国籍企業が全世界で稼ぐ所得に対して課税権を持ち、外国で支払った税金は外国税額控除により排除する仕組みとなっています。よって、米国企業が海外で稼ぎ、米国より低い税を支払った後、配当として米国に還流させると、その差額が追加的に米国で課税されることになります。ゆえに、米国の多国籍企業は、タックス・ヘイブンなど低税率国に利益を滞留させて、米国に還流しないようにすることが多い傾向があります。
税制改革によって、例えば、米国で本国還流税の税率が引下げられると、企業が海外で滞留していた利益が米国内に還流しやすくなり、米国内で企業の設備投資が増えやすくなるため、事業拡大に繋がりやすく、業績への長期的な期待が高まりやすく、また自社株買いの増加要因となります。ゆえに、その金額が多い企業の株価が堅調となりやすくなります。また、米国の企業が本国に資金を持ち帰る動きが増えます。その際、米国の企業が外国の通貨を売ってドルを買いますので、ドル買い要因となります。ドルが強くなり、ドル円では円安ドル高が進みやすくなります。
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