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日銀のETF買いとは(影響と狙い)

日銀のETF買いとは(影響と狙い)






日銀のETF買いとは

  • 日銀のETF買いとは、政府と日本銀行(以下「日銀」)が目標としている物価安定目標2%(物価上昇率が安定的に2%を維持できるようにする)を達成するために行う金融政策の一環です(対象とするETF(上場投資信託)を買い入れる)。



日銀のETF・J-REITの買い入れの推移(チャート含む)

日銀のETF・J-REITの買い入れのこれまでの推移(チャート含む)は、当サイトの姉妹サイト「株式マーケットデータ」で確認できます。




日銀のETF買いの狙いと物価への影響

日銀が買い入れを対象としているETFは、「TOPIX型」「日経平均型」「JPX日経インデックス400型」です。これは株式投資信託の一つであるため、日銀がETFを買うことで株価を押し上げる効果があります。これによって上場している企業は株式によって資金調達がしやすくなります。企業が資金調達しやすくなれば、企業はその資金で設備投資をしやすくなり、それによってGDPの成長率が高まり、景気への好循環が生まれやすくなります。また、日銀がETFを買い入れることによって、投資家も相対的に株式を買いやすくなり、より株価が下がりにくくなります。これにより、株価と景気の両面から日本の心理を明るくして消費を刺激し、物価上昇に繋げる狙いがあります。また、日銀はETF買いと同時に「ゼロ金利政策」も同時に進め、金利が低い国の通貨は下がりやすくなるため、為替円安が進み、日本の主要上場企業は輸出産業が多いため、それらの企業の業績や株価の追い風となりました。






株価のゆがみ

一方、この日銀のETF買いによって株価が下がりにくくなるため、企業の業績や経営を反映するとされている株価をゆがませていると懸念されています。日銀は企業の業績や経営に関係なくETFを買い入れるため、株式市場での日銀の影響が大きくなり過ぎ、また、企業の業績や経営に関係ない株価の上昇は、経営者が経営に対する課題を気づきにくくするとともに、経営に対する株主の目も緩んでしまうことが懸念されています。さらに、ETFを買い入れているため、銘柄によって株価の値上がりの割合も異なってきます。通常、株式は相対的に割安になれば投資家の買いが入りやすくなりますが、日銀のETF買いは株式市場に流通する株式が少ない銘柄ほど割高になります。




株式には限りがある

日銀のETF買いは、今後も続く金融政策とは考えられません。株式市場に流通している株式には限りがあるからです。日銀がETFの買入れの縮小や終了を行えば、株式を売却する動きが加速することも考えられます。ゆえに、日銀のETF買いによって割高になった銘柄ほど売り圧力が増しやすくなると考えられます。






これまでの日銀のETF買い入れ

2010年10月
TOPIX型と日経平均型のETF買い入れ開始(5:5の割合で)
2013年4月
買い入れ枠拡大
2014年10月
JPX日経インデックス400型を追加+買入れ枠拡大
2015年12月
補完的措置として買入れ枠拡大
2016年7月
買い入れ枠拡大
2016年9月
買い入れ割合の変更(TOPIX型約7割、日経平均型約3割)
2018年7月
ETFの保有残高が年間約6兆円、J-REITの保有残高が年間約900億円に相当するペースで増加するよう買い入れる方針に変更。ただし、市場の状況に応じて買い入れ額は上下しうるとした。
ETFの銘柄別の買入れ額を、TOPIX型を拡大(6兆円のうち2.7兆円はTOPIX型、3兆円はTOPIX型、日経平均型、JPX日経インデックス400型を対象に銘柄ごとの時価総額におおむね比例するように買い入れていたものを、2018年8月6日以降、4.2兆円はTOPIX型、1.5兆円はTOPIX型、日経平均型、JPX日経インデックス400型を対象に銘柄ごとの時価総額におおむね比例するように買い入れる)。
2019年4月
日銀保有のETFを市場参加者に一時的に仮付ける「ETF貸付制度」を検討。
2020年1月
2020年1月24日からETF貸付先を公募(2020年2月6日締切)。選定結果は3月上旬に公表予定。
2020年3月
ETFの買い入れをこれまでの年間約6兆円から年間約12兆円を上限に買い入れる方針に変更。J-REITは年間約900億円から年間約1800億円を上限に拡充。
2021年3月
ETFの年間「原則6兆円」の買い入れ枠を撤廃、「上限12兆円」の買い入れ枠は維持。買い入れ方針は「感染症収束後も継続することとし、必要に応じて買い入れを行う」とした。また、買い入れはTOPIC型のみとし、日経平均型のETFは買い入れを停止する。
同日公表された金融政策の点検で、ETFの買い入れについて株式市場のリスクプレミアムを「有意に押し下げ効果があることを確認」と結論づけた。リスクプレミアムに対する買い入れパターンごとの効果の変化も検証し、「市場が不安定な時ほど、買い入れ規模が大きいほど、買い入れ1単位当たりの効果が大きいことが示唆される」とした。
2021年4月1日からTOPIX型に一本化する。これまで買い入れ額の約75%はTOPIX型、約25%をTOPIX型・日経平均型・JPX400型としていた。
REITについては、年間「原則900億円」の買い入れ枠を撤廃。「上限1800億円」の買い入れ枠は維持した。
2022年12月
ETFの買い入れを信託報酬率が一番低いETFのみ買い入れる方法に変更。
2024年3月
ETF・J-REITの新規買い入れの終了を決定。コマーシャルペーパーや社債の買い入れは1年後をメドに終了することも決定。



追記(2018年7月31日)

2018年7月31日、日銀が金融政策を修正。金融緩和を粘り強く続けていく観点から、政策金利フォワード・ガイダンスを導入し、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)付き量的・質的金融緩和の持続性を強化する措置を決定。

  • 政策金利のフォワードガイダンス
    2019年10月予定されている消費税率引き上げの影響を含めた経済・物価の不確実性を踏まえ、当分の間、現在の低い長短金利水準を維持することを想定している。
  • イールドカーブコントロール(長短金利操作)
    短期金利は、日銀当座預金のうち政策金利残高に-0.1%のマイナス金利を適用する。
    長期金利は、10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買入れを行う。その際、金利は経済・物価等に応じて上下にある程度変動しうるものとし(会合後の記者会見で黒田総裁はこれまで±0.100%としていたものを、その倍程度を念頭にしていると発言)、買入れ額は、保有残高の増加額年間約80兆円をめどとしつつ、弾力的な買入れを実施する。ただし、金利が急速に上昇する場合は、迅速かつ適切に国債買入れを実施する。
  • 資産買入れ方針
    ETFおよびJ-REITについて、保有残高がそれぞれ年間約6兆円、年間約900億円に相当するペースで増加するよう買入れを行う。その際、資産価格のプレミアムへの働きかけを適切に行う観点から、市場の状況に応じて、買入れ額は上下に変動しうるものとする(2015年12月に決定した「設備・人材投資に積極的に取り組んでいる企業」の株式を対象とするETFの買入れについては、これまで通り、年間約3000奥円の買入れを行う)。
    また、CP(コマーシャルペーパー)等、社債等について、それぞれ約2.2兆円、約3.2兆円の残高を維持する。

また、これらの措置と合わせて以下の対応を行う。

  • 政策金利残高の見直し
    日銀当座預金のうち、マイナス金利が適用される政策金利残高(金融機関間で裁定取引が行われたと仮定した金額)を、長短金利操作の実現に支障がない範囲で、現在の水準(平均して10兆円程度)から減少させる。
  • ETFの銘柄別の買入れ額の見直し
    ETFの銘柄別の買入れ額を見直し、TOPIXに連動するETFの買入れ額を拡大する(2018年7月31日時点では、6兆円のうち2.7兆円はTOPIX連動型、3兆円はTOPIX、日経平均株価、JPX日経インデックス400の3指数に連動するETFを対象に銘柄ごとの時価総額におおむね比例するように買い入れていたが、8月6日以降、4.2兆円はTOPIX連動型、1.5兆円はTOPIX、日経平均株価、JPX日経インデックス400の3指数に連動するETFを対象に銘柄ごとの時価総額におおむね比例するように買い入れる)。



ETF貸付制度の導入

2019年4月25日、日銀は、日銀が保有するETFを市場参加者に一時的に貸し付けることを可能とする制度の導入を検討するとしました。ETFを日銀から借りられるようになると、マーケットメイク(値付け)業者は十分なETFを保有していなくても、大口の注文に対応しやすくなり、ETF市場の流動性向上が期待できます。









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